8.122008
建築士法改正
建築士法改正
姉歯元建築士の悪質な犯罪行為発覚が発端で建築関係の法律が改正されました。
建築確認申請の混乱で官製不況とまでいわれている建築基準法改正や法律を守らない悪質な建築士の罰則を重くした建築士法の改正が既に施行されています。そして、平成18年12月に第2回目の建築士法が改正され、平成20年11月28日に施行されることになっています。この第2回目の建築士法改正のポイントは「建築士の資質・能力の向上」と「消費者への情報開示」です。
今回施行される改正建築士法第24条の3の条文に『(再委託の制限)建築士事務所の開設者は、委託者の許諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理を建築士事務所の開設者以外に委託してはならない。』と云うのがあります。この条文に関連するのが建築士法第23条の10で『(無登録業務の禁止)建築士は都道府県知事への登録を行わずに、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行ってはならない。』となっています。これらの条文は、都道府県知事への登録をすることで情報公開の無い人間による設計等の業務を防止しようとするものです。建築基準法の目的である国民の生命、健康及び財産の保護を図るために最低限必要な当然の規定だと思います。
高度化と専門化の進んだ建築設計の中でいままでは曖昧であった構造と設備の設計責任をはっきりさせるために創り出された構造設計一級建築士、設備設計一級建築士と云う資格も消費者への情報公開を進める一環です。
しかし、今回の改正建築士法の解釈で設備設計をめぐり一部混乱が起こったため、国土交通省住宅局建築指導課に質したところ、つぎのような回答が返ってきました。
②構造や設備設計者が他人の求めに応じて報酬を得て「業」を行っても建築士法違反では無い。
国土交通省の見解は簡単に言うと、建築物の骨組みや日常生活を支えている構造や設備の設計者は、建築士の補助業務を行っているだけなので特別な資格も要らなければ、情報公開のための知事登録も必要ない、そして他人の求めに応じて報酬を得て、設計等を業とすることを無条件で認めると言うことなのです。建築士の補助業務をする人間は黒子のままでよいのです。国民はこの解釈を納得するでしょうか。法律改正をした国会議員に法律改正の趣旨を聞いてみたい気持ちです。
姉歯元建築士が犯罪行為に走った原因の一端に黒子設計者ゆえの報酬額の低さがありました。資格の厳格化や情報開示と設計者の待遇改善の両輪で犯罪防止を図るはずなのに、姉歯元建築士が起こした犯罪当時と何も変らない法律の条文解釈を国土交通省がするのは何故なのでしょう。
国土交通省は建築設計界の実情を全く理解していなかったと云わざるを得ません。改正建築士法を素直に解釈して実施すれば、建築確認申請の混乱とは比較にならないダメージを建築産業の上流である建築設計業務に与えてしまい、新規の建築工事が全て止まってしまう可能性があるからです。日本の建築設計界の現状と矛盾点を白日の下に出して、小手先の改良では無く抜本的な改革を行う時だと思います。
(2008年8月12日作成)