エリザベス一世が即位する4年前の1554年、ロンドン塔に幽閉されていた『前女王』が反逆罪の罪状で処刑された。享年16歳、わずか９日間だけの女王だった。

　年間600万人もの人が、ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている【ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》1833年、油彩・キャンバス、2.5ｍ×3ｍ】を見るために訪れている。

　英国の歴史を知らなければ、処刑に至った背景は判らない。しかし、この絵の前に立つと、一人の少女が尊厳を保ちながら従容として運命を受入れた姿に魅入られてしまいます。彼女の左の薬指にはめられた結婚指輪が、彼女の短い結婚生活を思い起こさせ、哀れをもよおさせています。

　兵庫県立美術館で7月22日から開催されている『怖い絵』展の初日に行ってきました。日常生活とかけ離れた恐怖の世界に導いていく作品群の魅力を堪能したひと時でした。

（石田　邦夫）